海、山、真昼の公園。夏のレジャーは、写真を撮る人間にとってはごちそうの季節です。ただ、毎年この時期になると思い知らされることがあって。真夏の光って、強すぎるんですよね。開放でボケを作れば白飛びする、水辺はギラギラ反射する、ポートレートは影がカチカチになる。カメラとレンズにそれなりに投資してきた人ほど、「機材は良いはずなのに、夏の写真だけ思い通りにならない」という壁に当たるんじゃないでしょうか。その壁、実はレンズの前に足す「ガラス一枚」で越えられます。春にレンズフィルターの入門編を書きましたが、今回はその続編。世界中の撮影現場で定評のある一級品だけを、夏のシーン別に3枚選びました。
可変NDフィルター

眩しい青空の下で、絞りを開けてとろけるようなボケを作りたい。夏のポートレートで一番やりたいこれが、実は一番難しいんです。光が強すぎて、開放にするとシャッタースピードが上限を振り切ってしまう。NDフィルターは、いわば「レンズのサングラス」。色を変えずに光量だけを減らして、真昼でも開放の柔らかい描写を可能にしてくれます。中でもNiSiのTRUE COLOR VARIOは、枠を回すだけで減光量を1〜5段まで無段階に調整できる可変式。可変NDの泣きどころだった色転び(安価なものだと黄色く濁りがちなんです)を徹底的に抑えた設計で、その名の通り色が素直。Amazonでも★4.5・950件超のレビューがつく、このジャンルの定番中の定番です。実売2万2,000円前後と入門用の倍はしますが、「安いのを試して、結局これに買い替えた」という声が多い一枚。ちなみに僕は67mmを基準に揃えて、ステップアップリングで他のレンズに使い回しています。
🔗 Amazon で見る → NiSi 可変NDフィルター TRUE COLOR VARIO 1-5stops 67mm
C-PLフィルター

海や川、プールサイド。水辺の行楽写真がなんだか冴えない原因は、だいたい「反射」です。水面のテカリ、葉っぱの照り返し、窓ガラスの映り込み。C-PL(円偏光)フィルターは、この反射光だけをスッと取り除いてくれる一枚で、枠をくるくる回すと水が透け、空の青が一段深くなる。初めて使ったとき、ちょっとした魔法だと思いました。選んだのはKenkoの最上位ライン、ZX(ゼクロス)。偏光膜そのものの性能に加えて、ガラスに応力をかけずに保持するフローティングフレーム構造で面精度を守るという、地味だけど本気の作り込みがされています。表面反射0.16〜0.2%という数値は、逆光気味になりやすい夏の水辺でこそ効いてくる。日本製で実売1万7,500円前後。廉価なPLと撮り比べると、青空の「濁りのなさ」が違います。
🔗 Amazon で見る → Kenko ZX(ゼクロス)C-PL N 67mm
ブラックミストフィルター

最後は、夏のポートレートを映画のワンシーンに変える一枚。Tiffenは1938年創業のアメリカのフィルターメーカーで、アカデミー賞の科学技術部門で複数回表彰されてきた、ハリウッドの撮影現場では言わずと知れた存在です。そのTiffenの代名詞がこのBlack Pro-Mist。強い光源にふわっとしたハロ(光のにじみ)をまとわせて、ハイライトを柔らかく、肌の質感をなめらかに見せてくれます。濃度は数種類ありますが、スチール中心なら効果が最も繊細な1/8がおすすめ。「フィルターをつけてます」という感じが出過ぎず、それでいて夕方の逆光や木漏れ日の下では、ハッとするような空気感が宿ります。国内でもここ数年ブラックミスト系は流行しましたが、映画の現場で磨かれてきた本家の描写は、やはり別格。実売1万3,000円台と、この3枚の中では一番手が届きやすいのも嬉しいところです。
🔗 Amazon で見る → Tiffen Black Pro-Mist 1/8 67mm(67BPM18)
フィルターって、「あとから足せるレンズの性能」だと思うんです。レンズをもう一本買うより一桁安くて、効果は目に見えて分かる。しかも一級品のガラスは、レンズを買い替えても使い続けられる。この夏はカメラバッグのポケットにガラスを一枚忍ばせて、いつもの水辺や公園に出かけてみてください。撮り慣れたはずの場所の光が、きっと違って見えるはずです。動画寄りの人は、先日書いた夏のジンバルカメラ3選とあわせて機材を整えるのも良いと思います。
by KURO / model: Mao @TOKYO HANG OUT


