数年前の6月、しばらく使っていなかった単焦点レンズを取り出したら、前玉の内側にうっすら白いモヤがかかっていました。最初は拭けば取れる曇りだと思っていたんですが、よく見るとクモの巣みたいな模様。レンズのカビです。一度根を張ったカビは菌糸でコーティングを侵していくので、清掃に出すか、最悪は買い替え。あのときの「やっちまった」という感覚は、今でも忘れられません。
カメラもレンズも、衝撃やホコリより、実は湿気でいちばん静かに死んでいくんですよね。日本の梅雨は湿度70〜80%が当たり前。カビは湿度60%を超えると活発に動き出すと言われていて、機材にとっての梅雨は、想像以上に危険なシーズンというワケ。部屋全体の湿度対策は以前梅雨前に整える部屋の除湿の話でも書きましたが、今回はもっとピンポイントに「機材そのものをどう守るか」の話です。一気に完璧を目指さなくて大丈夫。本命・手軽・遊撃の3段階で、無理なく組める守り方を紹介します。
機材の住まいを、ちゃんと用意する

本気で機材を守るなら、やっぱり行き着くのは防湿庫です。ガラス扉の保管庫の中を、電子制御で一定の湿度にキープしてくれるやつ。僕が信頼しているのは、東洋リビングのオートクリーンドライ ED-55CAT2。防湿庫の世界では老舗中の老舗で、プロのカメラマンが当たり前のように使っているブランドです。
カメラとレンズの適正湿度は40〜50%と言われていて、ここを外すと厄介。高すぎればカビ、逆に30%を切るとゴムやコーティングが乾燥で劣化していくので、「下げればいい」わけでもないんです。その点、防湿庫はちょうどいい湿度を自動でキープしてくれる。55Lあれば、ボディ2台にレンズ数本、双眼鏡やフィルムまで余裕で収まります。何より、棚に並べた機材をガラス越しに眺める時間が、地味に幸せなんですよね。所有欲を満たしつつ守れる、という意味でも完成度が高い。
価格は約¥46,000。決して安くはないけれど、レンズ1本のカビ修理が数万円、買い替えなら十数万円コースと考えれば、保険としてはむしろ安い。機材が増えてきた人にとっては、いつか必ず「買っておけばよかった」になる一台です。
まず一個から、始めるなら

とはいえ、いきなり5万円の防湿庫はハードルが高い。機材がまだそんなに多くない人や、「とりあえず今年の梅雨を乗り切りたい」という人に推したいのが、ハクバのドライボックスNEO 5.5Lです。要は、しっかり密閉できるクリアな保存ボックス。中に乾燥剤を入れて使う、いちばんシンプルな防湿の形です。
いいのは、電気を使わない潔さ。乾燥剤(付属しています)を放り込んでフタを閉めるだけ。湿度計が付いているタイプもあるので、中の状態をひと目で確認できます。5.5Lはミラーレス1台+レンズ2本くらいがちょうど入るサイズ感で、カメラを買ったばかりの人の「最初の一個」に本当にちょうどいい。スタッキングできるので、機材が増えたら同じボックスを積んでいけるのも気が利いています。クリアボディなので、中に何をしまったか開けずに分かるのも地味に便利。レンズ選びの記事で触れたレンズフィルターみたいな小物も、ここにまとめておけば迷子になりません。
価格は約¥2,300。ワンコイン+αで始められて、効果はちゃんとある。「防湿、何から手をつければ?」の最初の答えとして、これ以上ない一個だと思います。
バッグと引き出しの、遊撃除湿

防湿庫やドライボックスでカバーしきれないのが、「普段使っているカメラバッグ」や「ガジェットを放り込んだ引き出し」。撮影から帰ってきたバッグの中って、外気の湿気をけっこう吸い込んでいるんですよね。そこに効く遊撃役が、東洋リビングのモバイルドライ MD-3です。
これは乾燥剤の進化版みたいなアイテムで、湿気を吸って効果が落ちてきたら、コンセントに挿して再生(乾燥)させればまた使える。使い捨てじゃなく、半永久的にくりかえし使えるのがスマートなんです。窓の色でひと目で吸湿状態がわかるのも親切。カメラバッグの底にひとつ忍ばせておくだけで、移動中もボックスの中も湿気をコントロールできます。SDカードやモバイルバッテリー、ケーブル類をまとめた引き出しに入れておくのもアリ。
価格は約¥3,200。防湿庫が「家の守り」、ドライボックスが「箱の守り」だとしたら、これは「持ち歩きの守り」。ランニングコストがほぼゼロなので、一個あると地味にずっと役立ちます。
完璧じゃなくていい、段階で守る
家の守り(防湿庫)→ 箱の守り(ドライボックス)→ 持ち歩きの守り(モバイルドライ)。この3層で考えると、自分の機材量とお財布に合わせて、どこから始めるかを選べます。全部いきなり揃える必要はなくて、まずはドライボックスから入って、機材が増えたら防湿庫を迎える──そういう段階導入で十分。
カメラやレンズって、買うときはあれだけ吟味するのに、買ったあとの「保管」はつい後回しにしがちなんですよね。でも、ちゃんと守ってあげれば、いい機材は10年でも20年でも付き合える相棒になる。梅雨入りは例年6月の上旬から。レンズに白い点が出る前に、機材の住まいを整えてあげてください。未来の自分が、きっと感謝します。
by KURO / model: Mao @TOKYO HANG OUT


